埋蔵文化財センターの仕事について【写真の撮影2】

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こんにちは、スタジオです。

2021年8月のブログ[銭貨の保存処理(前編)]で紹介された、「銭貨」が写真撮影のためにやってきました。

その数559枚! 裏面にも大事な情報があるので、すべて表と裏の写真が必要です。

おもて面        うら面

文字・鋳型のズレ・劣化の具合などを確認しやすいよう、普段使う大型ストロボではなく、写真用電球を使うことにしました。

ちょっと光を柔らかくして、余分な光を防いで、セットを組みました。

光を調整している様子

間違えないように1枚ずつ撮ります。フイルムだと(もったいないので)2~3枚は一度に撮るところでしたが、デジタルカメラになって大量のカットを気軽に撮影できるようになりました。

真上からの撮影に頼れる相棒は、写真スタンド。安定感が三脚とはだんちがいです。

ライブビューで拡大してピントを確認。ブレないようにレリーズを使って、シャッターを切ります。

撮影の様子

撮影画像を確認・・。現像処理して・・・名前を付けて保存。
同じような銭貨がたくさんあるので、気を抜けません。

パソコンで現像処理をしている様子

 

クリーニング前        クリーニング後

洗浄・クリーニングを終えた銭貨・・・見違えますね!
これも「開元通宝」だとわかりました。 

次は保存処理後の撮影が待っています。(^^;)

埋蔵文化財センターの仕事について【調査の成果を残す】

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発掘調査の成果を文書で残すことも、埋蔵文化財センターの大事な仕事です。
埋め戻してしまうと、発掘現場の様子は2度と見ることができないので、その記録を活字と挿図で後世に残します。

その成果品のうち、速報版を「概要報告書(概報)」、決定版を「調査報告書」と言います。
今年度は3遺跡の「概報」、そして8遺跡の「報告書」を作成しました。一部は現在、刊行に向けた作業の真っ最中です。

方眼紙に記録された遺跡の図面

発掘調査では住居などの遺構を方眼紙に記録しますが、調査区の面積が大きければ大きいほど、膨大な数の図面が出来上がります。これらを整理・統合して、デジタル(パソコン)上で製図し、DTP(卓上出版)ソフトを使って、これまたデジタル上で本の体裁を整えていきます。

DTPソフトを使った編集作業

ここには6月、11月のブログで取り上げた土器の実測図のトレースデータや、7月にご紹介した遺物の写真もレイアウトします
見やすい、わかりやすい図版の作り方には、経験に裏打ちされた熟練の技と、なによりもセンスが求められます。

最終の段階では、これまでのデジタルから一転して、アナログな作業になります。
校正といって、紙に出力された文字、図版に誤りがないかどうかを繰り返しチェックします。
何度見ても誤字脱字は見つかるものですが、完全を目指して作業は続きます。

根気の要る校正作業

完成した「調査報告書」は、松山市考古館のロビーや図書館、またPDFファイルであれば奈良文化財研究所のホームページでもご覧いただくことができます。埋蔵文化財センターの仕事の成果を、ぜひご覧ください。

 

 

埋蔵文化財センターの仕事について【土器の復元2】

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 こんにちは。復元室です。

 前回のブログ(2021年5月12日)で、小さな土器の破片から土器を復元するようすを紹介しておりましたが、その後、紹介した破片から土器が1点復元できましたのでお知らせします。
 約1500年前に作られた古墳時代の須恵器・甕(かめ)で、上(口縁部)から下(底部)までほぼすべての破片がそろっていました(高さ49cm、口径25.6cm)。
 ひずみが生じないように、すき間なく接合するのがとても難しかったです。

平面展開
接合できる破片を机の上に並べます          
立体復元
接着しながら立体的に組み上げます 

 今回は、平面展開が5日間、立体復元が2日間、計7日間で完成させることができました。

 通常、遺跡から見つかった土器は、すべての破片がそろっていることはほとんどありません。したがって、破片がない部分は穴があいた状態になりますので、松山市では復元するときに、加工しやすく補強にもなる「石こう」を使っています。

 松山市では、この「石こう」を復元だけではなく、「ふんどう君ペンダント」に変身させる仕事もしています。
 ペンダントの完成までには、たくさんの作業工程があり、時間をかけてコツコツ作っています。

お絵かきができるよ!!
『ふんどう君ペンダント』

松山市考古館の受付で販売(1個100円)しています。

 ペンダントは、児童クラブなどで実施している「出前考古学教室」で人気があります。
 みなさん、笑顔で思い思いの絵をかいてくださいます。
 それを見て私たちもうれしくなり、ペンダント作りのはげみにもなっています!(^^)!

 

 

埋蔵文化財センターの仕事について【土器のトレース】

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 こんにちは。
 実は、考古館から少し西に上がった所にある文化財情報館でも、遺跡の記録保存作業をしています。
 今回は情報館より、土器の「トレース」について紹介したいと思います。

 土器などを実測した後に、原図を書き写す「トレース」という作業をします。遺跡で見つかった遺構や土器などを年報や報告書などに掲載するための作業です。

 12~13年前ころまでは、原図にトレーシング専用の用紙を貼りトレース専用のペン(ロットリング等)で書き写していました。

 トレース作業は、遺物などの状態を分かりやすく表現するために、線を描く箇所によって、例えば断面は0.3 ミリ、側面は0.2ミリ・・など、ペン先の太さを替えて作業をします。とても繊細な作業で、長い線を描く時は手先が震えない様にしばらく息を止めてすることもありました(>_<)。

   トレース専用ペン(ロットリング)               手描きトレースの様子 

 現在では、時代の進化と共にトレース作業がデジタル化され、細かく表現したい場所を画面上で拡大して作業することができたり、間違えてしまった線の修正が簡単にできたり、線の太さを簡単に変更できたりと作業効率が上がったほか・・、とても老眼には優しくなりました(^^♪。

デジタルトレースの様子 情報館の正面玄関

 考古館は11月末まで改修工事のため閉館してますが、情報館は開館していますので是非この機会に遺物の展示を見に来てください。お待ちしております。

 

 

埋蔵文化財センターの仕事について【試掘調査】

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『試掘調査について』

 試掘調査は、埋蔵文化財包蔵地というエリア内で、開発が行われる予定地に遺跡があるかどうか調べ、遺跡がある場合はその範囲や性格(時代・遺跡の種類)を明らかにするものです。

 ここでは、試掘調査の工程(ながれ)について紹介します。

 ①トレンチ(調査する範囲)を設定し、重機で掘り下げます。
 ②掘り下げが終了すると、壁面と平面を精査(掃除も)します。
 ③対象地内やトレンチ内を測量した後、写真を撮影します。また、遺構や遺物がみつかった時も写真撮影をします。
 ④調査が終了すると重機でトレンチを埋め戻し、最終確認をして試掘調査を終了します。

重機で掘り下げている様子           遺跡がみつかった様子

 

壁面の土層を調べている様子 埋め戻している様子

 もしかしたら、松山市内のどこかで試掘をしている私たちの姿を見かけるかもしれません。
 重機が動いていたり、深い穴があいていたり・・と非常に危険ですので、関係者以外の立ち入りはご遠慮くださいませ。
 ご理解とご協力のほどよろしくお願いいたします。

 

埋蔵文化財センターの仕事について[展示会の準備]

投稿者| doguu in 出土物整理 | 埋蔵文化財センターの仕事について[展示会の準備] はコメントを受け付けていません

埋蔵文化財センターに附属する松山市考古館では、年に5回ほど展示会を開催しています。
今回は、その準備の様子を紹介します。

まずは、
テーマを決めて、展示する遺物や写真などをピックアップ。

たくさんある遺物の中から選ぶのは大変!
とっても時間がかかります。

展示品が決まったら、
遺跡や遺物の説明文を書き、複数の人でチェックします。
OKが出たらパネルに貼ります。

 

空気が入らないように…
慎重に…

収蔵庫から展示室に、遺物や写真を運び入れます。

 

どこに置いたら伝わるかな…
様々なことを考えながら置いていきます。

壁には、発掘時の写真がたくさん。

 

写真の下に説明パネルを貼ります。
まっすぐかな?水平かな?

 

ばっちりです。

展示室の設営は約5日間で完了です。

 

伝えたいことが伝わるかなぁ。

現在、考古館は長寿命化のための大規模改修工事に伴い11月30日まで閉館中です。
12月から、きれいになった考古館に ぜひお越しください。
(次の展示会は『いにしへのえひめ』の予定です)

 

埋蔵文化財センターの仕事について[銭貨の保存処理(前編)]

投稿者| doguu in 出土物整理 | 埋蔵文化財センターの仕事について[銭貨の保存処理(前編)] はコメントを受け付けていません

 金属製品、木製品、動植物遺骸体(いがいたい)など、発掘調査で出土したままの状態で保管すると、近い将来には変形してしまい形が無くなってしまう遺物を、できる限り出土した状態の形を保つために行う処置を保存処理といいます。

 この処置を行う専門部署が保存処理室になります。今回は、出土した銭貨の保存処理を紹介します。

 現場で出土した銭貨は、処理室へ持ち込まれます。まず、現状の写真を撮り(写真1)、銭貨の状態(錆の進み具合、ヒビ割れの有無など)をチェックします。

写真1 撮影風景

 次に、付着している土やゴミなどを、水やアルコールで洗浄します(写真2)。

写真2 洗浄作業

 洗浄し乾燥した後に、洗浄で取り除けなかった土、ゴミ、錆(さび)ぶくれなどを顕微鏡で観察しながら慎重に除去していきます(写真3)。

写真3 クリーニング作業

 綺麗になり銭名の漢字が読めるようになれば、書籍資料など(写真4・5)の拓本と照合して、作られた時代などを判読し記録します(写真6)。

写真4 参考文献

写真5 銭名と拓本

写真6 照合作業

 その後は、銭貨の錆が進行しないような処置や、本体の補強及び酸素から遮断する樹脂含浸処置を行います。これは後編にて紹介します。

 

埋蔵文化財センターの仕事について【写真の撮影】

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 こんにちは、スタジオです。

 今回は、遺跡から出土した土器などを写真で記録する仕事についてご紹介します。

 調査で出てきた遺物は、洗浄・復元の後、図面や写真、文章などでしっかり記録します。時には消失することもある物の姿を、全てとはいえないにしろ「記録保存」します。その情報は、実物に代わっていつでもどこにでも伝えられますが、写真は、撮り方・掲載の仕方によってずいぶん印象が違ってきます。

写真1

 「写真1」は、束本遺跡4次調査の発掘調査報告書で撮影・使用したものです。
 遺物の形や色がよくわかるように、ガラスの上に載せて影を出さないよう撮影しています。

写真2

 「写真2」は、写真1の下段左から2番目の石器です。
 昨年出版された、埋文センター30周年記念誌『発掘 松山の至宝』用に改めて撮影しました。
 全長8㎝の小さな物の存在感を出すために、硬めの光で加工痕を強調し、あえて立たせて影を出しています。

 この石器の写真は、狩りの道具の代表として丸々1ページを飾ることになりました。
 地味で小さな遺物なので、もう少し見栄えを良くするために背景を工夫して、本に採用したのが「写真3」です。

写真3

 遺物を引き立たせるためと本全体のバランスを考えて、派手な色の背景は使いません。

 

 遺物写真の基本は、形や色や作り方などをなるべく客観的に表すことですが、使用目的によっては優先させる要素が変わってきます。難しいこともありますが、ライトを当てた遺物が想定以上の姿を見せてくれるときは、嬉しいものです。

 

 

埋蔵文化財センターの仕事について【土器の実測】

投稿者| hajiki in その他, 出土物整理, 報告書作成 | 埋蔵文化財センターの仕事について【土器の実測】 はコメントを受け付けていません

前回お伝えした接合作業に続いて、今回は、遺跡から出土した土器などを図面にし、記録する仕事についてご紹介します。

この作業のことを「実測(じっそく)」といいます。

土器についての情報を分かりやすく、客観的に伝えるため、図面にするのです。

実測では、真正面から見た形を図面におこし、左半分に立面(正面から見た状況)を、右半分に断面と内面の状況を書きます。

   図面にする実物の土器               実測した図面  

 

具体的には、全体の形を描き、断面の厚みを計測し、土器の表面(外面と内面)に残る文様、作り方、使われ方などの痕跡を見つけ、図面に書き加えていきます。
土器をぺたぺた触って、昔の人がどんなふうに作ったのかを想像しながら。。。

  土器を実測している様子(その1)   土器を実測している様子(その2)

気が遠くなるような作業です・・・

日本ではおよそ90年前からこの方法で、手作業で実測をしています。

最近では3次元のレーザー計測機が使われたりもするそうですが、埋文センターでは、昔ながらの手法でがんばっています。

 

埋蔵文化財センターの仕事について【土器の復元】

投稿者| hajiki in お知らせ, 出土物整理, 報告書作成 | コメントを残す

こんにちは。復元室です。

 私たちの部屋には、松山市内で発掘された土器が(ほとんどがバラバラに割れた状態)で運ばれてきます。

 その一つひとつを元の状態に復元していきます。

 接合できるものを探しだして・・・

このような状態になるまで頑張ります。

 完成したらこのブログでお知らせしたいと思います。

 小さな土器の破片を元の形に戻すのはとても大変な作業ですが、やりがいのあるとても楽しい仕事です。